「さよならを教えて」考察1 ざっとストーリーを追う(ネタバレ)

この記事は約53分で読めます。

この記事は全面的にネタバレしているので注意。先にプレイしておきたい方はDLSiteでDL版が販売しているのでそちらをどうぞ。

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「さよならを教えて」のあそBD版を考察しながらプレイした。参考にした攻略はこちら。

だがこのとおりにやってるつもりなのに望美エンドに到達できず苦労した。そこで別の攻略を探してみたところ、このページが見つかった。

このとおりにやってみたらどうにか到達。睦月・まひるルートのフラグが立っているとそちらが優先されるようだ。この二人はエンディングが特殊だからかな。

この記事では主人公考察をしながら「さよならを教えて」のストーリーをざっと追う。それだけで超長大な記事になってしまったので、より詳しい考察は別記事で……。なんだよ読み終わるまで約53分って。

ここから下は全部ネタバレ。

考察の前提

「さよならを教えて」の世界にはさまざまな解釈があるようだが、ぼくは最も一般的だと思われる「主人公は精神病患者で、病院に入院しており、ヒロインたちは妄想上の存在」という解釈である。

理由は「作品の描写を全て素直に解釈するとそうなるから」だ。一番理に適った解釈であると考えている。

それを踏まえて、主に「どこまでが妄想で、どこまでが事実だったのか?」という観点から考察をした。

主人公は妄想しているわけだが、描かれていること全てが妄想でもあるまい。いくらかは事実が含まれているはずだ。

ストーリーの流れ 兼 主人公考察

ここからはあらすじを書きながら軽い考察を交えていく。

1日目

ここで既に「天使が怪物に犯される夢」ではあるのだが、初日の夢では最後に主人公は怪物に喰われる。

また「怪物は誰かに似ている」と言っているが、天使には言及がない。

となえとの会話

となえとの会話は診察なのであろう。

この日は診察中に『教育実習』という言葉が出てくるが、言葉にしたのはこの時が初、どころか教育実習の妄想自体をまさにこの日に始めたと思われる。というのも『教育実習』とカッコ書きで強調されているからだ。主人公は「自分が疲れている理由」を求め、それを「教育実習のせい」ということにした。

そしてこれを言葉に出すと、となえも初耳のような態度をする。

「教育実習、辛いんだ?」と聞くとなえ。主人公は詰問調と感じるが、このときのとなえのボイスはとても詰問調には聞こえないような優しい話し方である。だが主人公は「ここで間違ったことを言ってはいけない」と強迫観念に囚われる。ここに主人公の完璧主義、失敗を許されないと感じてしまう生真面目さが現れている。

この診察中、診察室に睦月がやってくる。初対面だが、容姿に関して特に感想はない。

職員室

主人公が「職員室」としている部屋は、主人公の病室であると考えられる。理由は

  • 瀬美奈が訪れる部屋でもある
  • 職員室にしては“やけに狭い”

と描かれている点。ほかにもあるが後述。

主人公のこの独白から察するに、日誌を書いて提出し一日を終える生活を、「ずいぶん昔」と表現するほどに長いこと繰り返しているようだ。この日誌はとなえに提出して治療の参考にしていると後々わかる。そのため、入院生活での一日の締めくくりと考えられ、入院歴が相当長いものと思われる。

教育実習の終わりに日誌を書いて提出する、そのこと自体に不思議は無い。巧妙な描写であると同時に、うまい逃げ道(妄想)を考え出したものだと思う。

ここからは自由行動と見せかけて全てのエリアに行くことになる。

教室

「さよならを教えて」の特徴のひとつは異常にくどい地の文である。これでもかというほどに同じ描写が続くことがある。ここでは『教室』に向かっていると数回繰り返し自分に言い聞かせるかのような描写がそれだ。

ここで主人公は行き先が「教室」であると自己暗示をかけている。だから病院の白っぽい廊下が霞んで見え、現実遊離感が強まっていくのだ。

この部屋は「睦月の病室」と解釈する人が多いように感じているが、ぼくはデイケアルームかなにか、患者が自由に立ち入りできる共用スペースではないかと考えた。講義室のように椅子と机がたくさん置いてある部屋なのだろう。そうであれば黒板とチョークが実在していてもおかしくない。

ここは睦月にも馴染みのある部屋であり、彼女は窓からの眺めが気に入っていて夕方よく訪れるのだ。そして「帰ります」と去っていく。自分の病室から「帰ります」はないだろう。

初日にここで睦月に会ったときには『邪』の気配を感じ、夢の中の怪物を想像して怯える。そう、主人公はこの時点で、まだ睦月を天使とは思っていないのだ。

睦月は主人公を「先生」と呼ぶが、これが主人公が「先生」と呼ばれたと思い込んでいるのか、睦月が主人公を医師と勘違いしたのかは不明。医師と勘違いする可能性も無きにしも非ずである。というのも、主人公がとなえのところへ行くのは診療時間が終わったあとだし、彼はこの日スーツを着ているようなのだ(後述)。

屋上

屋上に向かうとき、主人公はスーツを着ていると独白する。

このときの主人公はスーツを本当に着ていたのではないかと思う。日誌を書く暮らしを「繰り返している気がする」と言う主人公が「着なれない」と言うほどなのだから、いつも着ている服とは違うのではないだろうか。

またスリッパは普通、学校内で教育実習生が履くものではないだろう。学校では普通上履きであろうから、ここが現実には学校ではないことを暗示する描写だろう。

保健室(診察室)

主人公は「となえと話すと不思議と落ち着く」という。一応は主治医であるということか。それで主人公は毎日診察室に向かうのかもしれない。

ここで「間接キス」と感じたときに、となえへの嫌悪感が露になっているような描写がある。

この描写だけではとなえに欲情しているのかとも読み取れるが、主人公は保健室を出たあとに口を拭う。だからこの描写も女性嫌悪の表れと解釈した。

職員室

職員室に戻ると瀬美奈がいる。帰りますと言われて困惑する瀬美奈に、主人公は「忘れてはいけないことを忘れているような気がする」。

瀬美奈は主人公に「大丈夫?」と尋ねるほどの心配ぶりだ。前日までと言動の差が大きいのだろう。

しかしとなえのいる部屋を「保健室」と表現したときに「そう…保健室…」と割合落ち着いているということは、主人公が現実を何か違うものと認識し始めるのはこれが初めてではないと思われる。

2日目

この日初めて自分が怪物となり、天使を睦月に似ているとする。

それまでの悪夢(プロローグ、1日目)では天使を犯すことよりも怪物に自分が喰われることのほうが大きく取り上げられていたが、この日からは自分が怪物となって天使を犯すのがメインになる。

夢の中で、主人公は「闇に飲み込まれたい」と願う。「光が強いほど僕の影が濃さを増す」という表現どおり、輝かしい人たちに照らされて彼のコンプレックスは色濃くなっていくのだろう。どこにでもいるような普通の人たちも、彼には眩く映っていそうだ。

診察

性欲を刺激されて所在なさを感じ、それを子供じみていると恥じる描写がある。主人公の精神状態が悪化するに従って性欲が高まっていくことと何か関連があるように思う。性欲を開放し受け入れることは、彼にとって“恥ずかしくないこと”なのだろうか……。

となえには夢と普段の気分について聞かれる。診察として極めて順当である。だが、主人公はとなえを主治医とは思っていないため、「なぜそのようなことを聞くのか」と不信感を抱く。ここに限らず、主人公はたびたびとなえに不信感を抱いている。疑心暗鬼の強い性格を表してもいるが、となえが主治医として信頼されていない、治療がうまくいっていないこともまた表されていると思う。

夕方、診察室に来ることが「生活に組み込まれた義務」になるほど入院生活が長いものと推測する。

トイレ

この日、教育実習の妄想がより具体的になり、「実習授業」が存在することになる。そして資料を得るためと「図書室」を妄想の中で作り出す。この日から図書室に行けるようになる。

教室

「声をかける」を選択すると会話になるが、主人公は怯えて逃げ出す。これが睦月に「この人は自分と同じ」と思わせた行動のひとつだろう。

「睦月が天使なのか?」「睦月を天使と同化させてはならない」と、睦月を天使と思いたくないような描写がある。自分も怪物になりたくないと思っている。

屋上

望美は主人公にとって妙に安心感があるようだ。心地の良い存在と好意的に見ている。

名字は秘密。まだ考えついていないのだろうか。

図書室

御幸には「そんなジャンルの本に興味があるんですか?」と聞かれるが、過去、実際に自分が興味を持っている本を「そんなもの」と言われたことがあるのかもしれない。あるいは、自分自身で「こんなものに興味があるなんて」と思ったのだろうか……。

この時点で、御幸はまだ主人公にとって苦手さを感じる相手である。一方で、御幸のことを理解しているかのような独白も入る。

職員室

実習の準備と聞いて困惑する瀬美奈。「要項を見ないと…」という発言は必死に話を合わせようとしたのだろう。

主人公は「日誌をつけていると、頭がぼんやりしてくる」と独白するが、現実が垣間見える状況で主人公はいつもそうだ。日誌をつけるのは考えたくない現実に目を向けさせられる作業なのだろう。

瀬美奈は大量の衣類をバッグに入れる。ここが主人公の病室であると仮定すれば、衣類は主人公が入院中着ていたものだろう。『教育実習を始める前』に着ていたものも含まれると思われる。なので「見覚えがあっても考えたくない」と思考停止する。現実からはいつもそうやって目を背けているのだろう。

なお、このとき、実習授業が『来週』とはまだ言っていない。瀬美奈には「時間なんかいくらでもある」と言われるが、それで主人公はかなり傷ついた様子である。入院生活で時間を持て余していることがコンプレックスなのだろう。健康だったなら、入院していなかったなら、学業や仕事に忙しかったはずだからだ。

この日は瀬美奈を女性と意識して罪の意識を感じ、頭痛がする。そして実習のことを考えても頭痛を起こす。これは現実に何かが起こることの現れではなかろうか。「実習授業」は現実に主人公が何かをさせられるのだと思われる(後述)。

3日目

黒い自分は白に染まって無になるという描写がある。これが重要な意味合いを持つように思う。主人公にとって「白に染まる」のは望ましくないと踏まえておきたい。

診察

主人公は「授業を教室の後ろで見学してちょっと手伝っている」と語る。

これを全て妄想と切り捨てるのはたやすいが、この中の一部は実際にしている行動ではないかと考える。「教室の授業」に似たもの、大勢が一か所に集まって行う活動を、主人公は参加せず遠巻きに見ている……そんな光景が実際にあるのではないか。精神科病院につきもののデイケアとか。それを主人公は「高島先生の授業」と都合よく解釈しているのだ。

ここで主人公は「来週から実習授業」と話す。時間が有限と思いたいがゆえか、語られていない時間に実習の時期が決まったらしい。

また瀬美奈とは教育実習に来てから初対面と信じている。『姉』と認めたくない思いがあるのだろう。

主人公の『教育実習』では、担当教科は「苦手な日本史」。得意な教科で楽々成功する都合のいい妄想ではなく、苦手な教科相手に悪戦苦闘する妄想なのである。ここに主人公の生真面目さというか、根深いコンプレックスというか、現実に対する絶望感や劣等感が垣間見える気がしてならない。

トイレ

主人公が過ごしている日々は、「繰り返される実習の日々」「自分が他者に試される場」「不安に晒される毎日」だそうだ。

入院生活の中でもデイケアのような入院患者向けプログラムでそのような苦痛を感じ続けていると思われる。「永遠にも感じられる」のは子供の頃からずっと続いている苦痛なのだろう。

そして「一刻も早く抜け出したい」という願い。主人公は妄想を始める前から自分の苦しみを無くしたいと思っていたのだろう。

このとき、弓道場と中庭が生まれる。

教室

ぼくはここでの会話はほぼ現実だったと思っている。

主人公は黒板に色とりどりのチョークで「怪物」「天使」と書き散らし、それを睦月が見ている。そして「なんだか…すごいですね」と微笑む。主人公が壁に向かって何かを書こうとする奇行を延々と行っていたら、いくら睦月でも不安がるのではないか。だからぼくは黒板とチョークは実在していたのではないかと考える。

そして主人公は何か発表する予定があるのではないか。というのも、「実習授業を受ける」と睦月が言うとは思えないのである。

例によって「妄想」と切り捨てるのはたやすいのだが、ここの睦月は制服を着ている。詳しくは別の機会に書こうと思うが、ぼくは「制服を着た睦月」はほぼ実在の睦月だと考えている。

デイケアかなにか、主人公と睦月がともに参加している活動で、主人公も何かを人前で行う予定があるのではないか。そして、睦月の退院日はそれ以降なのだろう。そう考えると、ここでの会話はいくらか妄想によるフィルターがかかっているものの、ほぼ現実のものと解釈できる。

屋上

「1着しか持っていないスーツ」これは事実ではなかろうか。そして実際にスーツで院内を歩いているのだと思われる。

中庭

田町まひると名付けられる。現れたまひるに「まーちゃん」と声をかけたのは、昔飼っていた猫と似ていて名を呼んでしまったものと考えられる。後日の描写からも、「まーちゃん」「まひる」は昔飼っていた猫の名前と思われる。

別れにまつわる事情を「覚えていない」とう。現実と密接な内容で思い出せないと解釈するのが自然だ。

まひるが抱きついてきた描写は、人懐こい猫が足にすりすりしてきたのだろう。

校舎(病院)を見て「墓標…。誰の?」という独白がある。主人公の墓標なのだろうか。

弓道場

矢が飛んだ音はするが刺さった描写はない。「刺さる効果音」は存在しないようなのだが、刺さったときには地の文で刺さる表現がある。それがないということは、刺さってはいないのではないか。

「変だと思われたくない。変だと思われてはいけない。」と主人公は繰り返す。強迫的である。コンプレックスの表れか、それとも病人扱いされたくないという意味か。

職員室

このシーンは妄想説を支持するなら決して外せない。ここで主人公がいかに妄想世界を形作っているかが非常によく分かるのだ。

というのも、彼の中では昼間、瀬美奈の授業を見たことになっている。なのに、職員室に瀬美奈が来ない。そのことで「自分の存在に関わるような」不安を感じる。

ここで主人公が言う「違和感から現実感が薄れる」とは、すなわち「妄想への違和感から妄想の現実感が薄れ、真の現実が見えそうになる」ということだ。彼には妄想の世界を生きているという『実感』があったが、それを失って恐慌状態になる。

そしてここで、職員室がやけに狭いと語られる。彼が職員室だと思っている部屋は、職員室らしからぬ狭さなのだ。

このあとの主人公の思考の動きは重要なのでしっかりと追う。

自分の乱れた思考に呆然とするが、主人公はすぐに気を取り直す。

「いや、違う。なんら問題はない。」これは主人公が妄想を強化しようとしているときの思考のクセだ。直前に考えた不都合なことを「違う」と否定し、別の考えを次に続ける。

ここは「瀬美奈の授業」が現実でないことを強く表している。「彼女の授業を見学していたはずだった」のだから、瀬美奈が学校を休んでいてはおかしいのだ。

そして主人公は「早退したのだ」と考えつく。これには「納得のいく理由。納得のいく説明。」と満足した様子。そして主人公は平常心を取り戻す……。

主人公は妄想の綻びに気づいても、このようにして整合性のある説明をつけ、また妄想の世界に閉じこもっていくのだ……。

またここでは登場人物たちを思い浮かべるシーンがある。

  • 図書室=墓場。
  • 瀬美奈ととなえ=墓場。
  • 睦月=墓場。(2回)

現実に存在する人に「墓場」と付け加えることには意味がありそうだ。図書室は自分の裏返しだろうか。

女への溢れんばかりのコンプレックスも感じ取れるシーンである。

4日目

この日の夢で、主人公は「睦月は天使であり、自分は怪物である」と諦めて認める雰囲気がある。「あの天使は巣鴨睦月だった。」と確信めいた表現をする。

「真っ黒な僕」が、白に染められて「無」に転じる……これは後々重要な意味を持つ気がしている。

診察

死への恐怖が妄想を生み出すという話は暗示的だ。

となえの状況について考えている場面なので「肉体に迫る危機」だが……主人公の場合は「精神に迫る危機に対して、脳が上げた白旗」なのかもしれない。

トイレ

主人公は日々の悪夢を「臨死体験」と重ね合わせ、「白に染まった」=黒い主人公の居場所が無い世界の孤独感に「耐えられない」と言う。「誰でもいいから人に会いたい」と人恋しい思いを抱えながらトイレを出る。

この日、人恋しさからか、ヒロインたちとの性行為の妄想をする。

教室

主人公は睦月が天使だと確信し、天使を恐れる。だが生身の少女睦月とは性行為で指を挿入するシーンがある。

行為自体は白昼夢のような妄想と思われるが、このときの「彼女が白く染まり、僕も白く染まる。」という描写は、黒い自分が無になる……つまりは“臨死体験”であると考えられる。

屋上

望美にフェラチオさせるシーン。これも後に我に返ったかのようなシーンがある以上、全て妄想だったのだろう。

ここでも彼女と世界が「白に染まる」という描写がある。白に染まった世界に、主人公の居場所は無い。主人公の感じる強い孤独を表しているのかもしれない。

中庭

赤い花が咲いている。まひるは去り際に花を「カンナ」と知らせる。これを「主人公が思い出した」ととるか、それとも「カンナということにした」のか、を考えたが……おそらくは思い出しただけだろう。

というのもカンナの花言葉の一部は「妄想」「永遠」だそうだ。主人公は「花言葉は知らない」としている。もし主人公が花言葉を知っていて、花を自分で指定したならば、カンナを選ぶとは思えない。

ここではまひるについて、同じ文章2文が2回繰り返される。思考の混乱を表すとともに、共に過ごしたい気持ちの強さの表れか。過去を懐かしんでいるのか。

図書館

御幸は敵対的である。男の人が怖いと言われ嗜虐心が湧く。主人公は御幸のような子がよくわかると言う。ここだけではないが、御幸は主人公と似ているとする描写が多い。御幸を傷つけたいと思う心は、過去の自分を否定したいという心の現れだろうか。

「そんなジャンルに興味があるんですか?」と聞かれた本はオカルトだった。主人公も魔術に傾倒していたが、実効力のなさに気づき興味をなくした。つまらない現実を変える力はない、自分を救い出してくれるものではない……そう思って興味を失ったのではなかろうか。

会話後の回想で、主人公もまた御幸のような年頃の少女が怖いとわかる。オカルト本を読んでいたのはその頃だったようだ。その頃から不安と焦燥感に苛まれる暮らしだったようだ。

弓道場

こよりは主人公の心の隙間を突くように不意に現れる。不意に浮かび上がる思考のメタファーなのだろうか。

謝る主人公に「大きな声出せるんですねぇ」とコンプレックスを突き刺す嫌味たらしいこより。主人公はこよりと話していると自分がガキのよう、裸にされたようと感じる。こよりに仕返しをして少し快感を感じ、帰ろうとしたところ「見栄っ張りなんですねぇ」と言われる。ここでBGMが消えており、よほど主人公にとってダメージの大きなシーンだったことを窺わせる。

回想で「こよりと話していると自分のダメなところを思い知らされる」と言う主人公だが、散々不快な思いをしても、こよりの空気の抜けたような話し方が嫌いでないらしい。

職員室

この日、瀬美奈は「プリントを刷っている」。この描写の意味を考えてみたが、おそらく瀬美奈はロッカーに主人公の衣類をしまっている。

というのも、主人公が「プリントを刷っている」と独白するまでに間があるのだ。

そしてそう独白してからは流暢だ。これは主人公が現実を妄想世界と整合性の高い内容に解釈するときによくある流れである。紙がよく詰まる、つきっきりで見ていなければならない印刷機……いかにも古い学校にありそうではないか。

瀬美奈は「貴方のでしょ! 手伝って頂戴」と言い、『プリント』を折って『机の中』にしまう。瀬美奈の言動は現実のものと考える。これは持ってきた洗濯物を畳み直してロッカーに入れているのだろう。

こう考えると、この部屋は主人公の病室なのだろう。

またこの日は主人公の「現実からの目の背け方」がよくわかる。

肝心なところが聞き取れなかった。

いや、違う。別に肝心ということもないだろう。

主人公が妄想を強めるときの思考の流れである。彼はいつもこのようにして現実から目を背けているのだろう……。

となえが死にかけたときの話を瀬美奈としているときに、主人公は「努力も経験も主義主張も死の前では無力」と考える。主人公は、死を「不平等なものを平等にしてくれるもの」と考えているかもしれない。彼の中では「死=救い」なのだろう。だとすれば「お姫様を救う」と言って殺す彼の行動は、彼の中では筋が通っている。

その後、瀬美奈は疲れた様子で主人公の態度を見、自分を鼓舞するかのようにして帰っていく。それを見た主人公は「切実な現在進行形の悩みを抱えていそう」とまで思うのだが、それが自分のこととは全く考えないのだった。

5日目

この日は一変して怪物と天使ではなく、少女たちととなえが出てくる夢である。だが、この夢は主人公にとっては今までで最悪の悪夢であると思われる。

なぜなら、夢の中では自分を「先生」と思っていない……つまり妄想が綻んでいるのだ。

この日は起床時の様子が描かれるが、かなり混乱した様子である。

診察

ここでは主人公は少女たちとの性行為を「白昼夢」と認識している。妄想の中で暮らしているとはいえ、現実に起きたこととは思っていないのだ。

主人公は「となえに正気を疑われている」と不安がるが、となえは「妄想を見ているかどうかよりも、実際に消耗していることのほうが問題」と言う。そして主人公はとなえの優しさを感じ、全て話そうとするが、睦月が来てしまったことで「天使が警告に来た」と極度に怯える。

この日はどの選択肢を選んでも主人公がそのとおりに行動せず「あのコが僕の畏敬する天使様」と答える日である。

トイレ

「教育実習さえ終われば元の日常に戻れる」と考え、そうすれば疲れもなくなると信じている主人公だが、ここで「日常は終わらないから日常だ」とも気づいてしまう。

教室

見上げた教室で天使に指差された気がして天使様の樹へ。睦月に会う。睦月は天使様の樹について話を聞かせてくれる。睦月も知っているのだし実在の逸話かと考えたが、睦月の創作の可能性もある。

睦月に何か言われるが聞こえない。認めがたい現実に関わる言葉なのだろう。話の流れからは「自分も赦されたい」「恋を叶えてほしい」などと言っていそうである。

屋上

心理テスト。

正解「もう一度弔問客に会える」は主人公は自然な思考の結果のようだが、サイコパスの回答とされる。「僕はどこか『おかしい』のだろうか」と主人公は回想で不安がる。

一方、定番の不正解を選ぶと「意外と普通の人」と笑われるが、「つまんないの」と失望したように望美は去っていく。「普通の人」という評価には安心できると主人公。それでいて望美の態度に不条理さを感じる。

中庭

まひるがひどく浅い七不思議の話をする。まひると話しているときに主人公が七不思議を考えているのだろう。

ただ、天使様の樹だけは実在の逸話なのではないか。睦月が語って聞かせてくれるのがその理由である。もしくは睦月が大きな樹を見て想像した物語を主人公に語って聞かせたのだろうか。

図書館

うたた寝していて起きたら全裸の御幸。友好的。そんな様子を見て嗜虐心に駆られ、言葉でいじめ始め、しまいにはフェラチオをさせる。と思ったら眠っており、もう一度御幸が現れるが、それも夢なのだった。

回想の「そっちから勝手にやってくる」とは、意図せず浮かぶ性的妄想のことと解釈した。日が進むにつれて主人公は性的妄想に支配されがちになっていくが、それを「自分のせいじゃない」と思いたいのだろう。

弓道場

心を落ち着かせようとして弓道場へ。七不思議に弓道場が関係あるらしいと独白。

こよりは「先生が来ない日は部活をやっている」と言うが、単なる嫌味なのか、それとも妄想上でも主人公が疎外感を感じていることの表れだろうか。

主人公によると、こよりは主人公の心を見透かすようなことを言い、攻撃的な意志はなく、こちらからぶつけても空気のように手応えがない。それでいて感情は鏡のように跳ね返す存在のようだ。そして「悪意はないが神経に障る」とも。

弓は人を殺せるくらいの威力があるという話から、こよりと同じ会話を繰り返し、4回目で画面が「フェラチオさせる」で埋め尽くされ、フェラチオシーンになる。

天使様の樹

この日は教室に行かなければ、職員室に戻る前に天使様の樹へ向かい、睦月に逸話を聞かせてもらう。

その際、印象的な独白がある。

「永続する終わり」「終わり続ける1日」……これは主人公が妄想を始める前からずっと感じていることなのだろう。彼にとっては毎日が「終わり」なのだろう、そのくらいに日々が絶望的なのだろう……。

職員室

瀬美奈が「家族は?」と問う。ここも象徴的だ。家族の話題は主人公を現実に引き戻すきっかけとなりうるのだが、主人公は「なにかが邪魔をしていて、思い出す気にならない」と現実から逃れようとする。

それでもデータとしてだけ姉と家族のことを思い出すのだが、主人公は姉のことを「意識的に記憶の外に置いていた」と思い出したがらない。そして姉か義姉かすら判然としない。しかしながら、瀬美奈に「お姉さん、優しかった?」と問われたときには「いいえ」と即答する。

両親と姉に叱られるシーンは姉の下着を盗んだりして叱られたところだろう(まひるENDにて判明)。「時を超えて幾度も繰り返された」との表現から、この体験がトラウマとなって何度もフラッシュバックしたと思われる。

6日目

少女たち二人の会話。この日はいろいろなバリエーションがあるようだ。誰のルートに進んでいるかがここではっきりとし、対象でない少女には会えないケースが出始める。

保健室

この日、主人公の思考は相当に混乱している。そんな中、「休診日」の札を見る。その札を主人公は認識できたのかどうか不明だが、鍵が閉まっていることでとなえの不在を実感する。

ここのくどい文章もまた、主人公が自分に言い聞かせている描写である。「授業」(デイケア?)は本当になかったか、もしくはあると妄想していたが、となえの不在を受けて整合性のために「授業はなかった」と言い聞かせているのだろう。

そしてとなえの不在は「休日だからだ」と言い聞かせる。

このあとも「休日でも学校は開いている」「教師が休日に出勤することは珍しくない」「僕は休日だというのに出勤してきた熱心な教生」と妄想の整合性のために必死な言い聞かせをする。

職員室

そうして「職員室」に向かった主人公は「やけに狭い」と感じる。以前はそれで恐慌に陥ったものの、今回は「こういう職員室もあるのだろう」と平然と流す。

瀬美奈には「なんでこんなところに」と言われるが、入り口で突っ立っていたからと考えた。

7日目(雨の日)

夢が無く目覚める。この日は雷雨だ。チャイムが不協和音を残しているように感じた。

診察

主人公は雷を「僕への罰」と解釈する。暴かれるのが、晒されるのが怖いと独白。雷光の白い光は闇を暴き曝け出すから怖いと怯える。

この日、主人公はとなえに七不思議の話をするが、となえは「天使様の樹」を知らないようである。

ここが解釈に悩むところだ。睦月の創作と考えたほうが良いのだろうか。となえが七不思議などに興味が無くて知らないという可能性もあるが……。

七不思議を主人公はよく知らない。となえも最初はとぼけているが、「知ってる」と言い始める。これは主人公に「七不思議に意味など無い」と言うつもりで冗談を言ったものと思われる。「保健室のいい女」で締めて笑ったことからそう考えた。ちなみにこのとき語られた内容は以下のとおりだ。

「僕がよく行く場所ばかり」と因果を見つけようとする主人公に「だからあんたは…」と何か言おうとする。妄想を作り上げやすい性格を指摘しようとしたのではなかろうか。関連性の無いものにも関連性を見つけ出し妄想に繋がっていく例があるらしい。

それにしても「薬出してあげよっか?」と言うが、投薬治療をしていないのだろうか……?

またこの日の診察では、主人公はまひるに関して「滅茶苦茶にしてやりたくなる」と攻撃性を表す。

トイレ

主人公は「紗がかかったような現実感のなさ」を感じている。彼にとっての現実とは妄想のことだから、妄想のリアリティが薄らいでいる、つまり妄想世界が壊れようとしているということか。それとも妄想に浸りたくても現実が見えてきてしまうのだろうか。チャイム音が崩壊していくのも、妄想の学校が学校でいられなくなっていくことの表れと思われる。

七不思議が自分の行く先々に存在することで「世界は僕に悪意を持っている。先手を打たなければ」と被害妄想を露にする。これは主人公の精神状態が追い詰められていることの現れだろう。診察中に突然現れたまひるへの攻撃性といい、主人公の病状はかなり悪化していそうである。

ここで七不思議の内容が具体化する。

次のページで「誰から聞いたのだろう」と自分でも疑問に感じているが、これは今まさに主人公が考えついたに違いない。

そして主人公は「実習授業さえ終わればすべては元通りになる」と信じている。実習授業は実際に何かをするのではと考えたが、少々疑わしい気もしてくる。

教室

38個の椅子と机。実際の数とは違うかもしれないが、講義室のような部屋で椅子と机がたくさんある部屋なのかもしれない。

全裸の睦月にフェラチオさせる空想。最後、「睦月の服が散乱していた」とあるが、何かとの見間違いだろうか?

屋上

自分は正常だと言い聞かせるかのような独白。

この日は望美のアナルを指で犯すシーンがある。主人公の精神状態が荒廃していくと性行為や残虐行為の描写が増える。望美が「おとうさ…」と言葉にしたことで「父親に繰り返し犯された」と確信する主人公。だがそれは彼が考えついた内容でしかない。

中庭

「遠近感が狂ったように小さいまひる」と出会う。まひるは猫であるという前提で考えると、これは普段会っている猫によく似た小さな子猫が現れたのだと思う。

この日の中庭のシーンは現実の出来事と解釈した。詳しくは畳んでおくので、ヘビーな残虐行為に耐えられる自信のある人だけ見てほしい。

「濡れた獣の匂い」を嗅いで主人公は欲情し、小さなまひるとセックスをし始める。

このとき、実際に猫に挿入し、激しいピストン運動で殺してしまったと思われる。

またまひるルートで出てくるが、主人公はかつて飼い猫のほかに何匹も猫を殺している。飼い猫の死を見ながら射精していた主人公は、このように猫を犯して殺した経験がほかにもあるのではないか……。だからこそ獣の匂いで欲情したのではなかろうか……。

死んだ「小さなまひる」を見て、主人公は悲しみを抱かない。強がりではなく、本当に悲しみがないのではないかと思う。

図書館

図書館に向かえば御幸に会える……その全てが妄想であることを、この日の主人公の独白が語っているように感じる。

主人公がそう決めているから、出会うのは御幸以外にあり得ない。そして、それは自分が作り出した状況なのではなく「自然なこと」なのだ……妄想ではない、現実なのだ……と思い込もうとしているシーンと感じる。

御幸は僕を拒絶していない。主人公はそう信じ込み、「対人恐怖症の治療」と称して、御幸を縄で拘束し外に連れ出す。

弓道場

こよりに弓の手ほどきを受ける。3本射っていいことになり、1本目は瀬美奈、2本目はとなえの顔を思い浮かべ、3本目はこよりに射る。こよりに刺さった効果音は地の文で描かれていた。

職員室

瀬美奈とは昔から折り合いが悪かったことがわかる。「あんたなんかもらいっ子」は事実だろうか? 主人公が姉を思い出そうとして姉か義姉か混乱していたが、瀬美奈は義姉なのかもしれない。

「やっぱり嫌いだ。」から瀬美奈をよほど憎んでいそうである。

8日目

この日も夢がない。チャイムはさらに変質する。

診察

早く着きすぎて瀬美奈と鉢合わせ、となえに不信感を抱く。となえへの不信感のきっかけはいたるところにあるようだ。

「最近少し明るくなったかと思ってた」ととなえ。以前の主人公は現在のように思考が散乱して陰鬱な雰囲気だったものと思われる。

「あんたも辛いんだろうね」と言われた主人公は、一瞬現実に戻りかけているように思う。

だがすぐに「いや違った」と考えを撤回し、妄想の世界に戻っていく。

彼は自分の不調の原因を作り出そうとして教育実習を考え出したと思われる。「終われば楽になれる」と信じることで精神の安定を保とうとしたのだろう。だが妄想の教育実習に彼が理想とするような終わりはない。それどころか現実と齟齬がある。だからこそ日に日に調子を崩す一方なのだ。

彼が教えてほしい「さよなら」とは、「無限に続く苦しみへのさよなら」なのかもしれない……。

この日、となえは「こーなりゃ…」とつぶやくが、女としてのアプローチはこのとき考えたのではなかろうか。

トイレ

「来週」とはいつの来週なのか、永遠に「来週」を待っているのではないか……そう主人公は考える。妄想が綻び始めているのがわかる。

教室

天使と睦月で混乱し「どちらでも同じことだ。」と片付ける。初期には天使と睦月を同化させてはならないと必死だったのに、だ。

天使様の樹の話を教えてくれるが、主人公には一部聞き取れない。

選択肢が現れ、選ぶと告白されるシーンを空想し「違う」フェラチオを空想し「嘘だ」と睦月から好意的に接される可能性を否定する。その後いつの間にか天使様の樹の前にいる。

この描写は睦月ENDで睦月が言っていたことから察するに「睦月に対して何かを言おうとした、だが混乱して逃げ去ってしまった」と解釈するのが妥当だと思われる。

屋上

ここでは同じ文章が繰り返され、主人公の思考の混乱が見える。

望美が父親に強姦されていると身体から聞き出したことが事実なのか掴めずにいる。選択肢を選ぶと「僕は気狂いではないから」と何も言わない。自分が正気だと思いたい節があちこちから窺える。

その後屋上で過ごし、去るときに「望美は父親に陵辱された。父親は煙草を吸っている」と強く確信。このとき彼の中で事実となったのだろう。

中庭

当たり前のように現れるまひる。過去の飼い猫の回想で、「猫の名前は、ま、ま…」と猫の名を語りそうで語れない。

猫にカラシを塗る回想で、「ま…!」と声をかけている。ここに限らず、猫の名絡みで「ま……」と言うシーンは多い。ここは「待て」の言いよどみのようにも見えるが、名を呼ぼうとしたとも考えられる。

このシーンが根拠でぼくは飼い猫の名前を「まひる」と考えた。「まーちゃん」と呼んでいたのだろう。

車に轢かれ死にそうな猫を見て主人公は勃起し射精する。飼い猫の死が悲しかったのは「僕自身の手で救ってやれなかったから」。主人公の中で「死=救い」である可能性を考えると、自らの手で殺してあげられなかったということだろうか。

我に返ってまひるに「ごめんよ」と頬擦りし逃げられる。その直後に「カラシを塗り込んでみたいな」と直前と大きく違う思考をする。ここからも主人公の支離滅裂さが強く現れたシーンである。

図書館

この日の御幸はいくらか友好的で、ともに準備室のガラクタを見に行って戻る。その後、御幸がコンプレックスを露わにする。その自虐的な言葉が主人公に突き刺さる。「この世から消えたい」という御幸に主人公は同感する。彼は自分を肯定できない。それでも生きているしかない主人公が、人生に深く絶望していると窺える。

自分がろくでもない人間だと主人公は昔から分かっていて、今でも思っている。特別な自分は「特別にダメな自分」。御幸と主人公は同じ思いを抱く。

そして主人公の屈折した思いが明らかになる。

人生に絶望しきっていながら、更なる絶望を求める主人公……。彼は「死ぬ理由」が欲しいのかもしれない。

弓道場

こよりの腕を引き抜くシーンから始まる。「今、僕の中で、破壊衝動は性的衝動に直結していた。」とあるが彼の中では常々そうなのでは?

こよりの女性器に矢を突き立てる。そしてこよりに矢を射る。突き刺さる音は無いが刺さっている描写がある。だが、矢を射続けていると思ったら、不意にこよりが矢を射るシーンがあり、風切音のあと暗転する。刺さった描写はなく、「尻餅をついていた」らしいが……。

こよりが現れるので「人形遊びをしてた」と言って去ろうとすると、こよりがまた主人公に矢を向ける。主人公は走って逃げ出す。

なんらかのメタファーであるこよりを破壊し尽くしてしまおうとしたが、不意打ちを食らい、反撃されそうになって逃げ出した……。そういうシーンだろうか。

職員室

この日の瀬美奈は荒れている。「そんな態度でここから出られると思ってるの!?」と怒鳴り、妄想をやめろと訴えるが、主人公は「僕を貶めるつもりですね?」とまともに受け止めない。瀬美奈もこの状況に追い詰められているのだろうが、主人公もまた追い詰められる。

痛い目を見せてやろうと強姦しようとしたときに主人公が「禁忌感と汚らわしさ」を感じ、彼女に対し「その気になれない」のは、実の姉だからなのか、それともそれだけ嫌いな相手だからなのか……。

9日目

夢はない。チャイムはかなり崩壊している。

診察

『来週の教育実習』さえ終われば楽になれると強い確認。

となえの艶っぽい視線に勃起し禁忌感を抱く。しかし、となえからセックスに誘われた途端に主人公はその気が萎える。このときの描写も主人公の価値観が窺い知れるような気がする。

大人の女性から誘われると萎えてしまう。主人公はそれを好ましく考えていない。ここにもコンプレックスがあるのだろう。

「毒牙にかけたのか? 僕が? そうだ…」からフェラチオさせる妄想があくまで妄想で、そういう行為をしたことにしておいているだけだとわかる。最も大部分のヒロインは妄想の存在なので性行為も妄想には間違いないが、「睦月にもしていない」ということだろう。

好きな子はと言われてヒロインたちの話をし「あんたが救わなきゃいけないのは…」ととなえ。自分、とつけたかったのだろう。

ここからかの有名なマリオの話。

主人公は「マリオは妄想している」という話と考え、「操作している人が妄想している。僕がマリオなら誰かが操作している」と言い出し、となえに「お前だな」と詰め寄る。

が、「ちゃんと向き合え! 自分に…」と言われ頭がぼうっとし、「ちゅうしゃ」と聞いて逃げ出そうとする。主人公はいつもこのようにして現実から逃げ続けていると思われる。注射を打たれたのも初めてではないだろう……。

ここの選択肢でルート分岐し、条件を満たさない場合はバッドエンドする。

トイレ

ここのシーンで、主人公は周りから否定されていると常々感じているのがわかる。そして自分自身ですら自分を肯定できない。それほどのコンプレックスの塊なのだろう。

「僕の知覚の中に世界がある。だから僕が世界だ。だから僕が世界を救うしかない。」と言い始め、「お姫様」に会いに行く。

この日、救うと決めたお姫様以外は存在せず、3ヶ所目の移動先は職員室となる。全てのルートを混ぜて書いているが、実際に読めるのは一度に一人だけである。

教室(睦月ルート)

天使がいると確信して入ると、背景に立ち絵で睦月がいる。これは現実の睦月をはっきりと視界に捉えたのだと思われる。

だが、「ここでこうして出会うのは何回目だろうね?」のシーンが3回繰り返され、4回目には睦月は去る。現実に起きたのは4回目だけ? すぐに去ってしまう睦月。普段はそんな感じなのだろう。

教室を出ると教室に着く。これは隣の部屋に移動してしまったのだろうか……。

今度は天使がいて「助けて…」と言われ、主人公は救う方法を考える。天使を天に帰して自分も救われようとする。悪夢がなくなり現実と夢との境界線を押し戻せると期待。

僕になにができるっていうんだ、何もできない

助けを求められたのは僕以外に彼女を救える者がいないことの証明

このときの思考の流れも「違う。」と3回繰り返し「違うぞ。」と、主人公の妄想のパターンだ。だからこそなのだろう、選ばれしものと感じながら劣等感の存在も感じる。

教室から出て教室に入ってまた出て廊下へ行くのは、なんの意味がある描写なのかよくわからない。

屋上(望美ルート)

主人公が父と母を回想する。父は暴力的で、母は主人公に呪いをかけたそうだ。母の言葉と暴力の風景が、主人公の人格形成に強烈な影響を与えたらしい。主人公がやけに暴力的になったり、子供のころから虫や猫を殺したりしていたのは、両親の影響……いや、両親のせいと思いたいのだろう。

主人公は虫と猫への暴力を例えに出しながら望美に暴力を振るう。このとき例えとして出ているもので主人公が実際に行ったことが明確なのは猫だけだが、その他の暴力も実際に行ったものと思われる。対象が虫だらけなのと、飼い猫を殺したときの回想シーン「殺してもいいのは虫より小さな生き物だけにしよう」と合致するのである。主人公は少年時代にも弱者をいたぶって自分の心を保とうとしていた。その傾向が今でも続いているのだ。

中庭(まひるルート)

主人公は飼い猫の回想をし「最愛の妹」と評する。それがまひるのイメージに繋がっているのだろう。主人公にとって、初めてまともに愛せた存在なのだと思われる。

逃げたまひるを追うと白猫が躍り出る。これはまひるが猫であることを表しているのだろうが、主人公が猫と知覚できるのは現実が見えてしまっていることの証左でもある。

このシーンでは、「飼い猫が死んだあと、鎮魂のため近所の猫を何匹も殺した」と主人公は独白する。「殺していいのは虫より小さな生き物だけにしよう」と誓ったはずなのだが、「鎮魂のためだから許される」と大義名分を借りて猫を殺して楽しんでいたのだろうか……。

図書館(御幸ルート)

主人公と御幸の思考は完全に同調し、「会話」ではなくほぼ独白である。このことからも、御幸と主人公が極めて近い存在だとわかる。

人の中に人の相似形があるか確認しようと御幸を壊してみるが、見つからない。「僕を壊せば御幸は見つかるだろうか」と主人公。

弓道場(こよりルート)

主人公はこよりに畏れを抱いていて、「こよりとの会話は自分を見つめ直す精神修養の場」と表現する。こよりとの会話は嫌ではないそうだ。そうしてぼんやりとしながらこよりを待っていると、こよりは矢を構え、主人公の頭蓋に矢が刺さり、少し前のシーンに戻る。

そして改めて現れたこよりは全裸。一度は話を合わせようとしても、主人公は結局襲いかかり、心が洗われるような思いを感じる。主人公は綺麗なもの、完成されたもの(こより)に憎悪と嫉妬を抱き、壊れたもの、崩れたもの、足りないものに愛情を感じると言う。

「こよりを僕の『白』で染めてやる」と、主人公がもっとも浴びたくない「白」をこよりに浴びせかけ、「汚い」と呪詛をする。が。最後、暗転して、「先生もヒマなんですねぇ」とこよりの間延びした声が聞こえてシーンが終わる。

こよりとの“戦い”で主人公はいつもこうだ。不意打ちで矢で射られたり、気分を害されたりする。やりこめたと思ったら反撃を食らい、手痛いダメージを負う。「白」に染まることは主人公にとっては「無」になること、消滅することなのだが、その方法ではこよりを消滅させることができなかった。主人公は手を尽くしてもこよりを征服できないのだ。その上、こよりは平気で蘇り、主人公に反撃をする。

こよりは、それほどに手ごわい何かのメタファーなのだろう……。

職員室

昨日のことを封じ込めようとする主人公。「本当に何も覚えていない」を選択すると、覚えてない、と選択肢どおり。主人公の思考のクセをプレイヤーが自分で選択して実行する巧妙なシーンである。

「罪の意識はあるけれど…」を選んでも「昨日のことは思い出したくない」と記憶を封印する。どちらにしても自分の行動として違和感が無いのだろう。

この日、主人公は「無意味な記号しか書けない」が、翌日の魔法陣との関連が気になる。

主人公は機嫌が悪く、瀬美奈を挑発するが、瀬美奈には現実を聞かされる。声が変質して聞き取りづらい(カタカナで表示)が、主人公には現実の正しいセリフがきちんと聞こえているのだと思われる。妄想フィルターがうまく働かなくなっている。バッドエンドのときにもカタカナで現実の台詞が表示されるが、そのときと似たような重篤なパニック状態に陥っていそうである。

10日目

この日のチャイムの音がガタガタだ。これも主人公が妄想の学校を保てなくなっていることの表れだろう。

診察

この日のとなえは強硬手段に出る。「(生きていくには)本当に辛いことばかり」という主人公が「教育実習が……」と言うが、となえは「本当にそう?」と疑いをかける。となえは「死んだほうがラクかもって考えてる?」「今すぐ死ねる?」と聞くが、主人公はためらう。それを見たとなえは「まだ生きていたいと思っているのさ」と言い放つ。とんでもない荒療治である。

このシーンでとなえの唇から白いものが溢れているあたり、主人公の精神状態が壊滅的なのがよくわかる。

となえが「自分と向き合ってみよう」と言ったとき、主人公は現実を知覚しかけ、すぐに妄想に戻る。

「なんだかおかしな声」とは、現実の物音だろう。しかし主人公はすぐに妄想上の設定を確認して、妄想世界に戻ってしまうのだ。

だがとなえが誘惑してくる(ように見える)、そしてとなえが分身する。ここの裸体のとなえは主人公の妄想で、現実のとなえは話の流れからも白衣を着たほうと思われる。始めはとなえの真面目なほうの台詞が強く聞こえてくるが、次第に裸体のとなえの声が強く聞こえる。現実を知覚でき始めたはずの主人公は、となえの強硬手段によって妄想に強く侵食される。

そしてとなえの「教育実習は妄想」という台詞だけが両方ボイスがだぶる。現実でも妄想でも主人公はとなえにそう告げられ、画面は暗転して少しの間がある。このときに主人公のアイデンティティはかなり破壊されたと思われる。となえがとどめを刺した。となえが主人公の精神を崩壊に導いたのだ。

その直後、裸体でひび割れたとなえがセックスしたがり、主人公は悲鳴を上げて逃げ出す。

主人公は廊下を走りながら用を足し、そして昔図書館で学んだ魔法の儀式をすると決意する。

主人公が「順序が大切」と強調するとおり、この順に山手線のヒロインたちの名と同じ駅を線で結ぶと五芒星が描けるそうだ。ヒロインたちが出現する前にも五芒星の魔法陣が出現する。救うと決めたお姫様の場合は、魔法陣が強く光り輝いている。この魔法陣については別記事で改めて書きたい。

儀式・睦月ルート

図書館。主人公は御幸の話を聞き、天女に羽衣(神の力の象徴)を与えるように、天使に神の力を与えて天に帰そうと考える。

弓道場。主人公はこよりが善意で言っていると解釈するが、「悪意の不在が人に殺意さえ抱かせる」とも言う。悪意がないこよりに、それだけ不快感を抱いているのだろう。主人公が「僕になにができるっていうんだ」と言うと、こよりは「そのヒクツさは、すでに傲慢ですよぉ」と言い、自分にできることだけやればいいとも言う。こよりとの対話で、神経を逆撫されながらも主人公は何かを学び取っている。しかしながら「いつか殺してやる」と殺意剥き出しである。別れの言葉はなかった。

渡り廊下で天使の力の象徴について考える。消化器を蹴り倒し白い泡が出る。

「ここは学校で少女たちが先生と呼ぶから僕は教師。」と教育実習の妄想すら壊れてしまっている。

ここで「天使を救うために他のみんなを生贄にしなくちゃいけないのかなあ」と考えるが、つまりそれは、他の皆を生贄にして天使を救うという意味だろう。

屋上。望美は3人目と決まっている。「飛んだら天使になれるのかな」と望美。二人で金網の向こうへ出て、落下感のあと中庭に着く。まさか飛び下りてはいないと思うが、ここの描写は解釈に悩む。

中庭では小さなまひるが現れる。まひるの思い出話に、「僕にもできること、あるんだな。そうやって、心に残ることもあるんだな…」と主人公。御幸ルートでは彼が「せめて誰かの心の中に存在したい」と感じていることがわかる。このシーンでの気づきは主人公にとってかなり幸福なのだろう(自分による慰めだけど)。「オデコにちゅーして帰してくれた」というまひるにそれをして帰す。まひると別れの言葉はない。

教室では興味深い独白がある。

この独白は「睦月に会うため、教室を妄想で作り出した」ということなのだろう。この部屋が教室でないと、主人公は認めているのだ。

だからこそ睦月の台詞で、主人公の名は「人見さん」と聞こえる。主人公は現実を知覚しているのだ。

睦月は「ここで会っても自分が怯えているか、『人見さん』が怯えているかだったが、普通に話せるようになった」と語る。

主人公は「僕がキミのことを必要としている」と言い、「キミも僕を…」と言いかけたときに夕日の角度が変わったことを感じる。黄昏時が終わってしまうと感じて主人公はパニックを起こし、妄想の世界に入り込む。ここを妄想とするのは睦月が「先生」と呼ぶからだ。

その後、「別れの儀式」が終わったのかと思う主人公だが、「まだ救えない」とも感じる。

儀式・望美ルート

まずはグラウンド整備に使うトンボを引きずりながら弓道場へ。こよりの発言に拒絶的な対応をして「会話が噛み合っている気がする」と感じる主人公。そう対応するのが適切と感じるのだろう。鳥を射たことはないが、とこよりは主人公へ矢を向け、「さよなら」と矢を放つ。視界は「白」に染まる。これは主人公の敗北を意味すると考える。

次は屋上。望美を優しく愛し、二人の意識は「白い闇」に溶け出す。そして望美は飛び降りてしまう。主人公は大慌てで駆け下り、中庭へ向かう。死体CGが表示されるが、「なにもなかった」と語る。そして「望美は飛べたんだ」と満足げに空を見上げると、落ちてくる望美。「生まれ変われたら…」と言葉を残して落ちてきた望美と衝突したとき、「少女の魂が僕の魂と同化して喰われてしまうような」気がする。このあとの「またかよ」の意味はぼくにはよくわからなかった。

次はまひる。だが、小さい。まひると話していて主人公は居眠りしてしまいそうになる。だが天使様の樹が視界に入ると歩き出す。まひるとは「ばいばい」と別れる。

石灰を見つけてグラウンドに線を引く(魔法陣を描く)。

教室で白濁まみれの睦月に会う。睦月は「自由になりたい」と言い、「先生の自由は見せかけ」とも言う。「さよなら」に「またな」と返す。

最後に図書館に向かう。歩いていてバケツにぶつかるが、それを「バケツが悪意を持ってそこにいたのが悪い」と主人公。図書館では「見たくなくて見えなくなったものがまた見えるようになるには、庇護してくれると確信できるものがあれば…」という話が出る。精神科医が、患者の依存対象になることもよくあるという話も出る。これはエピローグで主人公が「となえに師事するインターン」と思い込むことに繋がっているように思う。

儀式・まひるルート

睦月ルート以外で現れる睦月は白濁まみれで、天使の翼を生やしている。この睦月は主人公の妄想上の存在と解釈した。「猫を殺したりとか」と睦月は言う。主人公は「最後になんて言った?」と繰り返し問う。そのたびに睦月は同じ台詞を繰り返す。主人公の中で楔のように打ち込まれた出来事なのだろう。

まひるとはセックスシーンがあるが、実際に行ったのかは不明。パンツとズボンは脱いでいたようで、シーンの終わりに主人公はパンツを履いてズボンを履いて両方脱いで歩き出す。

望美のシーンでは主人公は「5人揃ってくれないとなすべきことができない」と言い、弓道場では「望美の番は終わった。もう次の番」と順番へのこだわりを強く見せる。

弓道場ではこよりに矢を射られ、画面が「白く」なる。これはこよりに敗北したことを意味するのではないだろうか。

図書館に向かう途中、白線を引く。

図書館では「なんだかたくさんの邪魔者がいたなあ。でも、もういないんだ。」と独白する主人公。「たくさんの邪魔者」とはヒロインたちのことだろうか……? 石灰を見てグラウンドに線を引くが、その後グラウンドを見ると魔法陣が描かれている。図書館の中では眠った御幸が孤島で猫と暮らした画家の話をする。

儀式・御幸ルート

まずは廊下で睦月に出会う。死体に命を吹き込むことができるという話がある。

次は図書館。主人公は「御幸は僕に似ているから僕を救ってやらないと」と考えている。御幸の身の上話を「全て知っているような気がしたが」聞く。これは主人公の身の上話でもあるのだろう。進学校受験の前に風邪を引いてしまい、受験は失敗したというが、高校のことだろうと思われる。主人公は大学受験にも失敗しているが、高校受験にも失敗しているのだろうか。それとも御幸にとっては高校だが、主人公にとっては大学の話なのだろうか。

御幸はバラバラになった標本。立派な脳を見て「友達のいない女の子」を想像したようだ。

このあと、「足元にきらきらひかる物体」とあるのだが、何なのだろう……?

弓道場では弓を射るときの心得(残心)の話をしたあと、こよりに矢を射られて暗転する。刺さったという描写は無い。射られても平気だったのだろうか。

校庭は通りがかっただけであり、屋上に向かって、落下感の後中庭に着いて1日が終わる。

儀式・こよりルート

屋上から始まる。「何がもうじき終わるんだろうなあ」と主人公はとぼけたような態度である。コンプレックスは分けてあげたいほどあるそうだが、望美も手一杯だとか……。

弓道場では、「今日は誰も来ないが、いつ来ても無駄かどうかは主人公次第」とこより。主人公が望んでいれば練習風景も見られたこと、つまり状況を作り出しているのは主人公ということだろう。

こよりは胸が大きくていじめられたと告白。「笑ってれば幸せでいられる」と暗い話をしたと笑うこより。そんなこよりに「人形に命を吹き込むのが僕の仕事」と独白しながら、主人公はこよりを優しく愛する。

図書館に向かう途中、石灰を見つけて線を引く(魔法陣を描く)。図書館では「人形を愛した人」について聞くが、人形愛は自己愛とも言われる。

渡り廊下も順序の一環と歩いていると、白濁まみれの睦月が現れる。「辛い時でも笑える?」と主人公が問うと、睦月は「笑うしかない」「自分の笑顔を見るのは自分ではない」と答える。他者のための行動……それが主人公にはできないのだろう。

最後に小さなまひるが現れる。「辛いときでも笑える?」と尋ねると、「怖いことがあると笑っちゃうことがある」とまひる。主人公は「泣くのと笑うのは遠くない気がする」と独白する。主人公はどちらもうまくできないのかもしれない。

「帰らなくちゃ、でもどこへ?」と言う主人公に、まひるが「ここにいていい」と言う。そう、まひると別れないのだ。永遠の夕暮れ時を過ごすが、いつしか夜になり翌日へ。

11日目

完全に崩壊したチャイム。

保健室

となえとセックスする。これは現実に起きたことと思われる。「オンナとして最後の手」とはこれのことだろう。となえは主人公を自分に依存させてでも妄想の世界から救い出したいと考えた。

このときの主人公の言動はまるで別人のようであり、相当に精神が崩壊した状態で行為に及んでいると思われる。しかし事後にはいくらか平常心を取り戻しているようだ。このままとなえに泣きついていても主人公は現実に戻れたかもしれない。

だが少女たちを思い浮かべ、主人公は妄想の世界に引き戻される。昨日の儀式の続きをし、妄想世界を終わらせようとする。

トイレ?(睦月、御幸、こより、望美ルート)

このシーンは、背景は職員室だがトイレ扱いとなっている。「真っ白い便器を見つめている」と女性の裸体がうつる。そして主人公は射精する。

このシーンは何なのか、かなり理解に苦しんだが、実在の便器を見ながら女性を犯していると想像してオナニーしていたのだろうか。

ちなみにここでうつる裸体はまひるルートの瀬美奈のCGの一部である。

トイレ?(まひるルート)

「僕は便所で罰している。」と表記され、瀬美奈を陵辱するシーンが描かれる。

射精すると、主人公はトイレから出る。瀬美奈のことは妄想で、他のルートのようにオナニーだったのだろうと思う。でなければ瀬美奈がエピローグで平然としている理由がわからない。

グラウンド

主人公はグラウンドで思いに耽り、絶叫する。このシーンは思考内容も行動も完全に狂人のそれである。

幸福感さえある中で、「世界は真っ白だ」と感じる主人公。これは主人公に居場所がないことを示すと思われる。もう主人公の妄想世界は主人公の居場所ではないのだ。そして心が平穏で、怒りも悲しみも喜びもない。ただ「使命感と、論理的な焦燥感」はあるようだ。

「終わりにしよう」と主人公は歩き出す。

睦月ルート

弓道場でこより。主人公は「教師になりたいとは思ったことがない。教師とはならなければならないもので、なるべくしてなるもの」……つまりは義務であり、果たせなければいけないと考えている。

主人公の昔の夢は「世界征服」だったが、周りとの関わりを一切経ってしまえば実現できると気づく。そして、それが自分には不可能だとも。彼は絶対的な孤独感に耐えることはできなかった。

主人公の今の夢は「楽になりたい」。それがとてつもなく非現実的で、とてつもなく遠い、見果てぬ夢。そのくらいに主人公は苦しみ続けているのだろう。

こよりは「もっとちゃんとあたしを壊せばよかったのに」「先生は自分のことを好きになれないんですねぇ」「あたしがこんなだから簡単にわかりますよぉ」と言う。こよりは主人公の「コンプレックスの対象」のメタファーなのであろう。

このシーンのこよりは主人公に対し非常に辛辣である。主人公の言う通りにこのシーンのこよりは異質である。

「二元的な対立に逃げ込んで自分を納得させようなんて安易」というが、これは「天使と怪物」のことであると同時に主人公が支配されがちな「白と黒」のことでもあるだろう。

散々不快な思いをさせられても、主人公は「キミが必要だった」という。コンプレックスの対象が存在しなくなったときの自分が自分でないということだろうか……。

図書館。順路を回っていると主人公は言う。「閉じてしまった日常の円環を開くための巡礼」だそうだが……? 図書館と言いながら背景は学校のプールのようだが、病院に似たような場所があるのだろうか。御幸には宵の明星(ルシファー=堕天使)が天に昇ると聞く。

その後、教室の窓を見上げて睦月と「日暮どきに天使様の樹で」と話す。

振り返るといつも通りの大きさのまひる。「呼び戻してごめん」と言いながら自分でも何を言っているかわからないと独白する主人公。天に召されたはずの飼い猫を生きているかのように扱った罪悪感なのだろうか。おでこにキスをして別れる。別れの言葉は「ばいばい」。

「きっとこういう別れ方のほうがいい」と主人公は言う。だがまひる…主人公の昔の飼い猫は、主人公を現実に繋ぎ止めるきっかけのひとつのはずだ。

望美が降ってくる。「生まれ変わりたい。これしかない」と屋上から飛んだという。「小さな黒い羽しかないから」天使ではない、と彼女は言う。「タバコ嫌いだったよね、もうやめたほうがいいかな?」と問う主人公に、「吸っても吸わなくても、先生は先生」と望美。これも考えてみれば不思議なのだ。タバコを吸い「タバコ嫌い」と言われる妄想。妄想なのだからタバコを好意的に受け取ってくれる女のコを描き出してもいいはずだが、妄想の中でさえ人に嫌われる要素を持っていたいのだろうか……。

最後に雑木林へ行くが、背景は階段である。実際はどこにいるのだろう……。ともかく天使様の樹で天使=妄想上の睦月を救って(殺して)「さよなら」をする。そして「救われた」という思いに満たされる。主人公は「いつも罪の意識に支配されていた。この苦しみから、この絶望から、この現実から…救われたい。」と独白する。

望美ルート

rebirthという書き置きを見て、給水塔を「望美の卵」と理解する。主人公は生まれてくる手助けをする気になってレンチで給水塔を破壊。中から出てきた「生まれ変わった望美」を、「今なら飛べるよ」と屋上から突き落とし、絶叫する主人公。そして望美の死を想像して錯乱する。「望美を受け止めなければ」と駆け下り、望美を探してこよりに会う。

こよりと話していて、「他者がいるから自己がある」「その相手にとって自分は意味がある」と確認できるのがコミュニケーションだと主人公は思う。そういう意味では主人公は一切コミュニケーションをしていない。

こよりには「殺す意味があるのならそれは幸せな死体」、「あたしは先生に殺してもらえませんでしたけどぉ」とも言われる。主人公にこよりを殺す理由は無い。「だからちょっと寂しい」とこより。これは主人公の世界観では「死は救い」であることを表すシーンのように思う。

次は御幸。ハンプティダンプティを歌うのは卵の話が出てくるからか。主人公は「前向きな自殺」について問い、御幸に「哲学的な自殺」を聞かされる。「一番綺麗で一番幸せなときに死にたかった」と心中した中学生カップルに、御幸は憧れるという。そして御幸は絶望を話題にし「先生は本当にその病気に罹っているわけではなさそう」とも言う。主人公はどこかに希望を抱いていて、それが妄想という形で表れるのだろうか。絶望しきっているようでいて、まだ生きていたいと希望を持とうとして妄想に耽るのだろうか……。

望美探しを再開する主人公は睦月に会う。睦月には「自分を慕うかよわい相手をいたぶって安心する。自分以外の何かを救うフリをして自分を納得させる。弱者が羽ばたこうとすると我慢できなくなる」と辛辣な言葉をぶつけられる。主人公が「どうしてキミがそんなことを」と言うと、「天使だから…でしょ?」と、主人公が思い描き喋らせているとわかる描写がある。

次に出会うのはいつもの大きさのまひるだ。屋上から飛び降りたら気持ちいいだろうなという主人公に、まひるは死に瀕したときの感覚を語る。飼い猫として死んだときの話を主人公は拒否し、「まひるを救えなかった」と繰り返す。まひるは「ばいばい」と去り、望美の死体が出現する。

望美の死体を前にして取り乱す主人公に、望美は「生まれ変わった。もともとの私に戻れた」と語る。妄想上の存在でなくなることができた、カラスに戻れたということか。「さよなら」と消えたあと、屋上からカラスが飛び立つ。これは主人公が現実を知覚していくために必要な儀式だったのだろう……。

まひるルート

まずはまひると会う。「キョーイクジッシュウが終わっちゃうの?」というまひるの問いに「え?なんのことだい?」と主人公。もう一度キョーイクジッシュウと言おうとしたまひるに、主人公は「それはもういいんだっ!」と怒鳴る。教育実習の妄想世界を終わりにしようという決意を感じる。

窓を見上げると白濁まみれの睦月。妄想の産物である睦月が終始辛辣。「ちゃんと見て欲しかった」とは、睦月を選ばなかった……すなわち現実ではなく妄想上のヒロインを選んだ自分の後ろめたさが言わせた言葉だろう。

図書館では御幸に猫は幸運の象徴という話を聞く。

印象的なのはその後だ。主人公は「真っ白い男と真っ白い女2人」を認識し、「ああいう連中を何度も見かけている気がする」と考える。そしてずっと白い連中を気に留めていなかったことに疑問を感じる。このとき主人公は陰部をいじっている。

弓道場に来ても主人公は陰部をいじる。こよりは「あたしは先生次第」と、主人公と密接な何かの投影であることを暗示する。「先生が自虐的だからあたしもこういう性格」というとおり、こよりに虐められるのは主人公の自虐的な思考がなしているのだろう。

主人公が気に入ったカタチ、可愛いと思うものを壊したくなるのは、永遠じゃないから。「永遠じゃないから儚くて美しい。それを証明したくなる」とのこと。

こよりはさよならでなく「ばいばい」と言う。これは正しく「さよなら」できなかったという意味ではなかろうか……。

その後、望美が落ちてくる。自分のことを「黒くて汚いし、羽もささやか」と自虐的。僕のせいで屋上から出てきてしまったと主人公は自分を責める。

最後にまたまひるのところへ。拳を突き入れ繰り返し突いて殺してしまい、同時に射精する。遺骸に話しかけると少しの間の後に元気な声。まひるは何度でも主人公の妄想の中で蘇り、主人公を愛するのだ。

主人公はカラシを塗った猫が死んでいくのを見て射精してから、それを思い出しながら猫を殺しては射精していたのだろう。鎮魂のためではなく快楽のためだったのだろう。このシーンを見ていて、ぼくはそう解釈した。

御幸ルート

御幸を解体してビンに詰めるところから始まる。彼女はホルマリン漬けの人体標本なのだろう。

次に白濁まみれの睦月(妄想上の睦月)と出会う。睦月は主人公に「自分に似た相手だから愛せる。自分の力量で簡単に理解できる相手にしか心を開けない」と指摘。辛辣な睦月や、「ちゃんと見て欲しかった」という言葉は実在の少女=現実を選ばなかった自己嫌悪がさせるのだろう。

図書館から渡り廊下、渡り廊下から中庭と歩くのが正しいトレースのルートだそう。中庭に着くとまひるが現れるが、自分から「ばいばい」と去っていく。

次は望美が落ちてくる。「飛んじゃえば自由になれるのに」と望美はたびたび言う。これは文字通り「自殺してしまえば」という意味なのかもしれない。だが、主人公にはそれができない……。

その次はこより。こよりは「憶えててくださいね」と、なくなってしまおうとしない。消滅を拒んでいる、消し去ることができないという意味合いを感じる。

最後は御幸のところに戻るが、「最後? 最期…?」と主人公は混乱した様子だ。御幸は主人公自身と極めて近しい存在のようだが、彼女と別れるということは「自分と向き合うことをやめる」のだろうか……? 御幸には「もう来ちゃダメ」「こんなことしてちゃダメ」と繰り返される。

こよりルート

まずこよりが現れ、「あたしに会うのは毒」と言う。主人公はこよりを消し去らなきゃいけない、と矢を取り出す。こよりを矢で滅多刺しにし、こよりの目をのぞいて自分に覗き返されているようで目をえぐる。そのようにこよりを壊そうとしたが爽快感がなく、少女人形も救われないと感じる。主人公は「まだすべきことがある」と感じる。

暴れていると望美が落ちてきて消える。望美が何度も落ちてくる。三度目で地面に追突する。望美の死は描かれないこともあるが、ここでは描かれる。望美=「希望」を失うことの暗示だろうか。

死んでいても語りかけてくる望美に「僕は常に後悔し続けてきた」「でもすべきことをしているんだと思う」と主人公は答えるが、「そうかなあ…」と望美。これはそのまま主人公の心の声なのだろう。

「私と一緒に飛べばよかったのに」とは「自殺してしまえばよかったのに」という意味かもしれないが、「飛べないんだ」と主人公は言う。

まひるはトンボを取り、握りつぶして食べてしまう。これは何かの暗示なのだろうか。虫とはいえ死が描かれることには意味がありそうだ。

次には白濁まみれの睦月が辛辣に主人公を責める。ここは「さよならを教えて」の世界を解き明かすのに深い意味がある会話と感じる。

「自分を相手に投影して…でも、自分の思い通りの理想を押し付けることもできずに、また自己嫌悪に陥る…」

これは自己投影で生まれた少女たちが自分の理想ではなく、少女たちに責められては自己嫌悪に陥る、そんな繰り返しのことだろうか。

「先生は自分を投影した相手をいたぶって自分の悪い部分を駆逐したと錯覚して安心するんです」

これはこよりのことだろう。こよりは主人公の悪い部分……コンプレックスのメタファーで、消してしまおうとしても消えず、絶えず主人公を苛んでくるということだろう。

睦月はまた「先生は、自分に向けるべき刃を、ついつい相手に向けてしまうんです」とも語る。素直に自省すべきであるところを、破壊衝動に任せてしまうことを指摘しているのだろうか。

睦月は去る。

図書館(画像はトイレ)では、「先生は何に酔っているんでしょうね?」と御幸。不幸、それとも絶望……?

最初の場所、最後の場所、最期の場所、弓道場。「練習見てみたかった」という主人公に「先生が心底そう望んでないから無理」とこより。主人公はこよりから出た毒を吸い込んでしまったのだそうだ。

エピローグ

全てを終え、することがなくなった主人公。「帰ろう」と考えて帰る先が無いことに気づき、目の前の「見慣れた、なんの意味のない灰色の建物」に入る。

ヒロインたちを「救う」こと、つまりヒロインたちとの妄想の中での死別……それは彼が妄想の世界で生きることを終え、現実に戻るための儀式だったはずなのだ。だが、それを果たしてやることがなくなってしまった主人公は、絶望する。

しまいには自分が誰なのかすらわからなくなり……登場人物の女性たちから「さよなら」と声が聞こえる。

だが、睦月だけは「彼女の唇はさよならの形をえがいてこわばる。」……つまりは「さよなら」をしたくてもしない。できない。睦月は現実との接点である。これが「現実とは『さよなら』したくてもできない」という主人公の深い絶望を表しているのではないだろうか……。

その後、セミの声がして、となえと瀬美奈の会話シーンが始まる。主人公は屋上でカラスを追いかけ、庭で猫と遊び、ゴミ捨て場からボロボロの人形を拾い、資料室で標本に見入っていたと明かされる。

睦月ルートの場合、現実の睦月について言及がある。

まひるルートの場合、主人公が過去に猫を殺したことと、思春期に瀬美奈に興味を持ち家族で叱ったことが語られる。となえはここで知るまでそのことを知らずに瀬美奈を主人公に会わせていた。

その他のルートで特別なシーンはない。睦月とまひるは扱いが特殊である。

スタッフロール後、主人公がインターンの妄想を始めたことがわかる。より現実と齟齬が少なく、瓦解しにくい妄想。「自分に依存させてでも教育実習の妄想から救い出したい」というとなえの治療は功を奏してしまったのだ。これもまた教育実習のようにすぐに瓦解するのか、それとも永久に妄想世界の住人となってしまうのか……。

バッドエンド

バッドエンドは各ヒロイン分のバリエーションがあるが、おおまかな流れは一緒だ。主人公は恐慌状態で「お姫様」を探そうとしているところに鎮静剤を打たれ、拘束衣を着せられて保護室に入れられる。

だが……。「苦しみを終わらせたい」主人公の「すべて」が終わるこのルートは、ある意味では主人公にとって最も救いとなっている気がしなくもない。

あまりにも悲しいことだが……。

おわりに

もっと考察書きたかったんだけど、文章量がまじで頭おかしいので別記事にする。とんでもない絶望を導き出してしまったよ。

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